まだ寒い日が続きますが、暦の上ではそろそろ春。各地から梅の花便りが届く時季です。梅は寒気のなか百花にさきがけて咲き、馥郁たる香りを漂わせることから、春告草の異名を持つ花です。古来、日本人に愛され、平安時代以前には花見といえば梅見を指したとか。万葉集には桜42首に対して、118首もの梅の歌が詠まれています。
●東風吹かば匂ひおこせよ
全国各地に梅見スポットがありますが、福岡県の太宰府天満宮は最もよく知られた名所のひとつです。919年(延喜19年)造営の歴史ある神社で、祭神は学問の神様として知られる管原道真公。入試シーズンともなると受験生が詰めかけます。道真公は幼いころから神童と呼ばれ、文武両面でその才能を発揮。右大臣として政治の中心で活躍しましたが、時の左大臣の政略で太宰府に左遷されてしまいました。京都を離れる際、道真公は自宅の梅の木に別れの歌を詠みます。「東風吹かば 匂おこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ」(春風が吹いたらその香りを風に乗せて届けておくれ。主人の私がいないからといって、春を忘れてはなるまいぞ)
●境内に6千本の梅の木。
太宰府天満宮の本殿の左右には梅の木が植えられています。このうち、本殿に向かって右手にあるのが「飛梅」。道真公を慕って、京都から一夜にして飛んできたという伝説があり、天満宮のご神木となっています。古くから、太宰府天満宮では梅の木の下でひょうたん酒を飲めば厄が晴れるという言い伝えがあり、節分厄除大祭の期間中は、飛梅の下でひょうたん酒の接待が行われます。また、道真公の御縁日の2月25日には梅花祭が行われます。神職が冠に梅の花を挿し、飛梅と伝統の神饌を備えて、祭典が執り行われます。梅花祭のころには、境内にあるおよそ6千本の梅の花が見頃を迎え、奥ゆかしい香りがあふれる境内では、短歌、俳句、川柳などの大会が開催されます。
太宰府天満宮本殿
受験生が奉納した絵馬
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